神子元島でハンマーヘッドシャークを
コンパクトデジタルカメラの
シャッター速度優先モードで撮る
水中写真テクニック講座

撮影・著者:神崎洋治

(2012/01/18)

2011年も伊豆の神子元島でたくさんのハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)に出会うことができました。

コンパクトデジタルカメラで撮ったものですが、まずは2011年に撮った神子元ダイビングの写真や、ハンマーヘッドシャークの群れの写真を紹介します。

 

撮影に使ったカメラ機種はオリンパス「XZ-1」です。この機種の特徴は以前スタジオグラフィックス(ウェブマガジン)でも「コンパクトデジタルカメラ進化論」で解説しましたが、とても魅力的なコンパクトデジタルカメラです。水中写真用に選んだ理由は後述しますが、水中に持って行くためのハウジングはオリンパス純正「PT-050」です。このセットならとても廉価に用意することができます。

「XZ-1」はコンパクトデジタルカメラでありながら、シャッター速度優先モードや絞り優先モード、マニュアルモードなどのマニュアル設定での撮影が可能です。これが神子元の撮影では生きてきます。私は普段「シャッター速度優先モード」を使用しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「進化した肢体」

神子元島には数種類の鮫が見られるが、迫力があるのはこのメジロザメ。
シャープなエッジは研ぎ澄まされた刃のようで格好良い。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F8.0 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「根待ち」

海底からせり出した岩につかまって魚の登場を待つことを「根待ち」と呼ぶ。

黒潮が近付くとまるで海外リゾートの海のように透明度は上がり、ブルーが拡がる。

そのかわり、激流もやってくる。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F3.2 1/200秒 ISO125 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主役の登場」

ゆらりと2尾のハンマーヘッドシャークがやってきた。

彼らはダイバーに気付くとたいていは逃げる体制をとる。

このときも身を翻してゆっくりと去っていった。

6月~7月にかけては、神子元島に近い根回りで見られることが多い。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F8.0 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「油断してはいけない」

根待ちをしていると突然ダイバー達の前にハンマーヘッドシャークの群れが現れた。

突然の遭遇に水中でもダイバー達の歓喜の声が響く。

慌ててカメラを構える前列のダイバー。

出会いはいつも突然なのだ。油断してはいけない。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F5.6 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遭遇の幸運」

ブルーの彼方から次々と現れるハンマーの大群。

神子元島でハンマーヘッドの撮影経験がある人には解ると思うが、浅めの根につかまって彼らを待っているときに、群れが同じ高さの正面からやってくる機会はそうそうあることではない、とてもラッキーなのだ。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F2.8 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「憧れのハンマー回廊」

根回りにハンマーヘッドシャークが来てくれる季節は、比較的、撮影も楽に行える。しっかり岩につかまってシャッターを切れば良い。カメラの基本操作が片手になるので器材は小さい方がいい。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F2.2 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偶然の遭遇を求めて」

真夏を迎えるとハンマーヘッドシャークの群れは主に外洋を周回するようになる。海の条件が良ければ、ダイバー達はグループになって流れに任せて外洋(中層)に飛び出す。ドリフトダイビングだ。ハンマーヘッドシャークとの偶然の遭遇を求めて。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F2.8 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しばし一員になる」

運良く中層でハンマーの群れに当たることができれば、近付いてしばらく併走することができるかもしれない。彼らの群れの一員になれるのだ。近づけるかどうかは海況を判断したガイドの指示と、自分の脚力次第。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F3.2 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハンマーリバー」

盛夏から秋にかけて群れはどんどんと大きくなり、密度も濃くなる。巨大な鮫の大群がまるで川のように長い群れになって次々とやってくるので「ハンマーリバー」と呼ばれる。 見下ろす光景も素晴らしいが、その中に入って撮れたときは格別の思いだ。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F3.5 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美しい被写体」

頭上を通り過ぎるハンマーヘッドシャークの群れ。単体に注目してフォーカスを合わせて撮る。最近のカメラはたくさんのフォーカスポイントを持っているが、僕の好みはセンターのみにフォーカスする設定。中央の被写体にバッチリ、ピントを合わせてからシャッター半押しのまま構図に合わせてずらせばいい。日の丸構図だって構わない。なによりセンターフォーカスなら周囲を泳ぐ小魚にピントを持って行かれる心配がない。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F3.5 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神子元ブルー・スペクタクル」

太陽の光を受けて銀色にキラキラと輝く身体を間近で見ることができたら、神々しくさえ感じるだろう。視界いっぱいに拡がるその迫力と感動は、どんなに大きなレンズを使っても収めることはできない、もどかしさである。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F3.5 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

ハンマーヘッドシャークはその奇妙な頭のカタチから、熱烈なファンも多いのですが、スクーバダイビングで見られるポイントとして有名なのは日本国内では与那国島と伊豆の神子元島だけです(希に見られるというポイントは他にもあります)。

 

■カメラ器材はできるだけコンパクトがオススメ

 

水中写真は陸上とは異なる難しさがありますが、特に神子元島は外洋に面しているため潮の流れが早いときもあり、岩をつかんでほふく前進で進むこともよくあります。 また、マスク(水中めがね)やレギュレーター(呼吸するために加えている装置)が飛ばされそうになるほどの流れにあうこともしばしば。

そんなとき大きなカメラを持っていると、どうしても行動の妨げになってしまいます。まずはきちんと行動できること、が最優先です。また、急流では片手で岩につかまって、もう片方の手でカメラを持ってシャッターを押すという体制が多くなります。そんな場合は片手でのカメラ操作になりますから、大型の一眼レフなど両手持ちが基本のサイズの器材ではかえって撮影は難しくなります。結果として、神子元ではカメラ器材はより小さい方が望ましいと思います。もちろん、一眼レフの方が画質は良いので、悩ましい選択ではありますが。

 

■シャッター速度優先モードとは?

 

一連の写真のデータを見てお気づきの方も多いと思いますが、僕はシャッタースピードを1/250にセットして撮影しています。前述のとおり、「XZ-1」はシャッター速度優先モードがありますので、そのモードにセット、数値を「1/250」にセットします。

カメラは自動設定のとき、周囲の明るさをセンサーで判断して、シャッター速度と絞り値を自動で設定して最適明るさで撮影してくれています。失敗写真は少なくなりますが、撮り手の意志は反映されません。撮り手の意志をカメラに伝えるのがマニュアルモードです。シャッター速度優先モードにセットして「1/250」に設定したということは「シャッター速度を1/250にして、絞り値はカメラが自動で判断して撮影しなさい」という意味を持ちます。シャッター速度が1/250で撮影できれば、今までのオートでは見たこともないようなカッコいいハンマーヘッドシャークの写真が撮れるはずです。

 

問題は、1/250もの速いシャッター速度にセットしたときに、カメラが自動で絞り値を変更しても撮影に十分な明るさが得られない場合です。例えば、天候や海況によって海が暗いときは、カメラは明るさを確保しようと絞りを全開であけてくれますが、それでも光がたりないときです。そのときはシャッター速度の指定の1/250をあきらめて、1/125まで遅くするか、1/250のままで、ISO感度の数値を上げて、暗くても撮れるように設定しています(ISO感度の数値を上げるとノイズが増えます)。

 

具体的には、潜行してすぐにシャッタースピード1/250のまま、シャッターを半押し、または1枚撮ってみます。明るさが足りないと、カメラは画面上の数値表示を点滅させて教えてくれたり、液晶の画面が真っ黒になります。そんな海況のときは、1/125かISO感度を400程度まで上げて撮影できるか試してみます。

 

潜行時とはいえ、あんまり手こずっていると置いて行かれても困るので、陸上の暗いところで練習しておくとスムーズですし、シャッター速度と絞り値、写真の明るさ、ISO感度の関係が理解できると思います。

 

■コンパクトデジカメか一眼レフか

 

神子元ダイビングの撮影にはコンパクトデジカメか一眼レフか?

実はその適正解はありません。個々のダイビングスキル、撮影スキルによって異なるからです。一眼レフを持って入ってもオートモードしか使わないのであれば、おそらくカッコ良い写真を撮るのは困難です。激流に耐え、ハンマーを追いかけ、高速シャッターが切れるなら、一眼レフがベストでしょう。コンパクトデジカメの利点はやはり機動力です。手軽に持って入れること。それでも初めて神子元ダイビングをする人は、1本目はカメラを持たずにダイビングや周りの景色に慣れることを優先した方が良いと思います。写真はある程度慣れてからでも挑戦できますし、気持に余裕がなければ失敗写真を連発するだけでしょう。

 

「XZ-1」はコンパクトデジタルカメラでありながら、マニュアル撮影はもちろん、シャッター速度優先モードもあります。撮った写真はRAWで記録することもできます。つまり、一眼レフのような大きなレンズや撮像素子はありませんが、操作は一眼レフと同様なのです。一眼レフに比べて撮像素子が小さいので、表現力は劣ります。白飛びや黒潰れも起きやすく、色合いのグラデーションも多少は表現不足にはなります。ただ、もし、今回お見せした写真がカッコいいと思ってくれるなら、これらの写真はXZ-1でも十分撮影できる、ということです。

 

もちろんオリンパスPENやソニーNEXなど、ミラーレス一眼を使うという選択肢もあり、それは実際、とても迷ったところです。今も迷いますし、ベストの選択のひとつだろうと思っています。しかし、小さい撮像素子にあわせて開発された「XZ-1」のズイコーレンズは、ミラーレス一眼よりむしろ明るいレンズ設計になっています。1/250などの速いシャッター速度で撮影するには明るいレンズが不可欠です。こうした経緯から「XZ-1」を選択しています。

 

XZ-1よりもっと撮像素子の大きなカメラで撮れば、ハンマーヘッドシャークの肌の質感がもっとリアルに再現できるとは思います。色もほぼ青一色ではなくなるかもしれません。しかし、撮像素子の大きさをとるか、明るいレンズをとるか、きっと当分はその解は明確には出ないとは思います。この夏は、気がついたらミラーレス機を握りしめて神子元島行きのダイビングボートに乗っているかもしれませんが、それはそれ。そのときはまたレポートと写真を掲載しますのでお付き合いください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エキジット」

神子元のダイビング時間は1回わずか 35分間。ダイビングの最後は外洋でボートに見えるようにフロートを上げ、ボートが迎えに来てくれるまで安全停止をして待つ。ハンマーヘッドシャークに会えた時も会えなかった時も、この海が名残り惜しく感じるひととき。

Camera Data:

オリンパス コンパクトデジタルカメラ XZ-1 + 純正水中ハウジング「PT-050」

F4.5 1/250秒 ISO100 ストロボなし RAW

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2011年撮影

 

初出記事 2012年1月

 

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