神子元島でハンマーヘッドシャークを撮る
シャッター速度と絞り、ISO感度の関係

(2010/07/28)

撮影・著者:神崎洋治

■最適なオートモード(シーン選択モード)がない!

 

さて、カメラが比較的高速なシャッター速度で撮ってくれるオートモードには「スポーツモード」があります。しかし、私のコンデジ(W300)の場合、スポーツモードがありません。なんと、シーン選択にスポーツモードがないのです。そのかわり、「高感度撮影モード」があります。ISO感度を上げることでシャッタースピードの速い写真を撮るというモードです。しかし、ISO感度については後述しますが画質を犠牲にしてシャッタースピードを優先するモードです。このモードを使って必要以上に画質を落とすのは本意ではありませんし、ISO感度を上げすぎるとかえって解像感が損なわれます。しかも私の機種では高感度撮影モードでは連写ができません(なんで?)。

 

それで納得がいかなければ…ということで「マニュアルモード」が付いています。

 

ぬぬぬ…挑戦的な…コンパクトデジカメなのにマニュアル設定で撮れと?

ふふふ…いいでしょう。

 

そりゃあ、いつも一眼レフで操作している露出の設定ですから、マニュアルモードがあれば、コンデジでだって一眼のようにマニュアル撮影できるハズです。ちっちゃいボタンをパスパスやって調整しますよ…と。

 

手動でシャッタースピードをできるだけ速く設定しておき、後はハンマーヘッドが登場したとき、状況に合わせて絞りとISO感度で適正露出に合わせて撮る、マニュアル操作でのハンマーヘッドの撮影に取り組んだわけです。

 

結果は・・

素晴らしい写真とは言えないかも知れませんが、ちっさいCCDの割りには頑張った写真が撮れたのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マニュアルモードでシャッタースピードを1/250に設定したら、輪郭クッキリでピタッと止まった写真が撮れました。

Camera Data:

SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、

純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100

F2.8 1/250秒 ISO100 ストロボなし

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影

 

■シャッタースピードと絞り、ISO感度の関係

 

さて、ここでカメラの基礎知識をおさらいしましょう。

 

写真は十分な光を得られないとき暗くなり、ひどいと真っ黒になってしまいます。逆に光の量が多すぎれば真っ白になります。この光の量を「露光量」と呼び、シャッタースピードと絞りによって光の量を調整することでちょうど良い明るさの写真を撮ることができます。露光量が適切な状態を適正露出と呼び、きれいな写真が撮れる設定のことをさします。

 

というわけで、露光量はシャッタースピードと絞り値によって決まります。シャッタースピードを上げれば上げるほど十分な光量が必要になりますが、その分絞り値を少なくする(一瞬で光をめいっぱい取り込む)ことで多くの光を得ることができます。シャッターの速さをカタカナで表したとするなら(笑)、シャッター速度が速い設定は「カシャッ」、遅い設定では「カッ・・・シャッ」です。カシャッと撮る方が一瞬でたくさんの光が必要ですが、一瞬の瞬間を切り取ることができます。

絞りは「f.2.8」や「f4.0」「f8.0」などF値で表わされ、少ないF値に設定するほど光量が大きくできるため、高速のシャッタースピードが使用できます。どれだけ小さい数値を設定できるかはレンズやカメラの性能によります。

 

現在のデジタルカメラは普段使っているときには真っ白や真っ黒になってしまう写真はほとんどありません。そうならないようにカメラが自動モードでサポートしてくれているからです。暗い海中のような悪状況下でも、なんとかそれなりの写真を撮るようにカメラが努力してくれます。

 

前回の失敗写真例のようになんとかカメラが撮ってくれた、ボ~ッとした写真では満足いかないので、もっときれいな写真を撮るにはどうすれば良いか、まず原因から考えました。前述の失敗写真例は「水中モード」で、シャッター速度はだいたい1/60秒~1/80秒で撮られています。それでは遅すぎます。これはカメラが「1/60~1/80」程度のシャッタースピードがちょうど良い、もしくはそれぐらいの遅いシャッタースピードが必要、と海中の明るさから判断して自動でセットしたものですが、それでは持ち手も被写体(回遊魚)もブレるので、もや~っとした残念な写真になってしまいます。最低でも1/125、できれば1/250秒以上にシャッタースピードをセットしたいところです。あの人のデジカメではきれいに撮れているのにワタシのではダメ…といったときは、シャッタースピードに違いがあるかもしれません。

 

私の場合も、1/250秒以上にシャッタースピードをセットしたいところなのに、自動の水中モードでは遅いシャッタースピードが設定されてしまいました。もちろん海中は陸上より暗いため、仕方ないかもしれません。しかし、シャッタースピードが限界まで速く設定されているわけではありませんでした。思いが叶わないのであれば、高感度撮影モードを使うか、マニュアル操作しかありません。マニュアル操作の場合、シャッタースピードを手動で設定し、それに合わせて自分で絞り値を設定して適正露出で撮る(もしくはその逆)、ことになります。失敗すれば真っ黒、暗すぎる写真ばかりになるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

被写体がゆっくり泳いでいれば、シャッタースピードは1/160でもいけました。ISO200に設定したら、もう少し明るい写真が撮れたかもしれませんね。ISOを100から200にすると、その分だけノイズが増える恐れがあります。

Camera Data:

SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、

純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100

F2.8 1/160秒 ISO100 ストロボなし

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影

 

一眼の場合は、シャッタースピードか絞り値のどちらかをユーザが決め、それに合わせてもう一方の数値をカメラが自動で分析してセットしてくれる優先モードがたいていは搭載されています(シャッタースピード優先/絞り優先)。この機能を使うと、失敗写真は激減します。しかし、コンデジにはマニュアル操作ができても優先モードまでは用意されていないものがほとんとです。そうなると両方の数値をユーザが設定して撮ることになります…それは失敗すれば暗かったり、真っ白な写真になる、危険度・ヤバさ、がムンムンということです。

 

また、比較的暗い海中ではレンズ性能で最も明るい絞り開放の状態でも光量がまだ足りない、ということにもなりかねません。例えば、シャッタースピードを「1/125」にセットしたとき、リアルビュー液晶が真っ暗になった場合は光量不足ですので、絞り(F値)を更に小さく設定します。なお、私のデジタルカメラの場合はズーム(テレ)とワイドとで設定できるF値が異なります。ズームではF5.5までですが、ワイドならF2.8まで絞り開放の設定ができます。つまり明るさを稼ぎたいときはズームは使わず、ワイドの状態で撮る必要があります。なお、F5.5より、F2.8の方がピントが合う範囲(被写界深度・ピントが合う遠近の距離)が狭いので、よりシビアなピント合わせが必要になります。

もし、シャッタースピードを「1/125」にセットして、F2.8にセットしたとしても液晶が真っ暗だったら、シャッタースピードをもっと上げたいどころか、下げなければ明るい写真が撮れない、暗い海中…ということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F値が小さいレンズを持ったデジタルカメラほど、シャッタースピードを高速に設定できるので、暗い場面では性能に余裕を持っていると言えます。ただし、大群全体にピントを合わせるにはF値はできるだけ大きい数値で設定したい…といった葛藤もあります。

Camera Data:

SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、

純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100

F2.8 1/200秒 ISO100 ストロボなし

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影

 

 

そして最後の手段がISO感度です。シャッタースピードを固定し、絞りを開放してもなお暗いとき…徹底的に光量が足りないときは、ISO感度の数値を上げることで写真を明るくできます。これがいわゆる高感度撮影です。弊害は、ISO感度を上げると明るくなる(シャッタースピードを高速にできる)反面、ノイズが増えることです(週刊誌でよく見るパパラッチが撮った超高感度写真を思い出してください)。海に入る前でも構わないので、予め自分のカメラでISO感度を上げて暗めの場所を撮ってみて、どの程度ノイズが出るか確認し、許容できるISO感度を確認しておきます。ちなみに水中モードなど、シーン選択モードではISO感度もカメラが自動で決める機種もあり、その場合はユーザがいくら高感度を手動で設定しても意味がありません。

 

ISO感度を上げるときは、デジタルカメラの「ノイズ除去(ノイズリダクション)」を強く設定する方法もあります。私の機種には高感度撮影時のノイズを低減する「クリアRAW NR(ローノイズリダクション)」機能があり、設定しておくことで高感度撮影で発生した時のノイズをRAWデータの段階で除去する機能です。

一般に「ノイズ除去(ノイズリダクション)」機能はたいてい装備されていますが、強すぎると写真がツルッとした滑らかすぎる画質になることもあります。

 

また、デジカメによってはコントラストや彩度、シャープネスなどの強弱を設定できる機種もあります。水中ではカメラと被写体の間に水の膜があるため、ぼんやりした画像になりがちなので、これらを強調することでしっかりしたメリハリのある画像にカメラが仕上げてくれるかもしれません。しかし反面、もしかするとその補正がやり過ぎな写真だなと感じる人もいるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コントラストはHard、彩度はHigh、シャープネスはHard、ISO200で発生したノイズを「ノイズリダクション」で除去、とあれこれ設定した写真。Photoshop で少し補正すると独特の写真になります。なお、F2.8で撮ると、被写体にピントが合えば、後ろの根はボケた写真になります。

Camera Data:

SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、

純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100

F2.8 1/250秒 ISO200 ストロボなし

補正:Adobe Photoshop CS4

撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影

 

一眼レフのマニュアル操作の知識を使い、コンパクトデジカメのマニュアル操作で撮った写真が、前回や今回紹介した画像です。Photoshop CS4を使って、カラー補正も行っています。

 

初心者向けに解説しようと思いましたが、今回は露出設定について全く解らない人には少し難しい話になってしまいましたね。ごめんなさい。

 

なお、シャッタースピードや絞り値など、撮った写真のデータはExifという規格に準拠して画像に記録されています。Exif情報は様々なグラフィックスツール等で確認できるほか、「Exif Reader」というフリーソフトでも見ることができます(吉本龍司氏作)。ここまで熱心に読んで頂いたのに、こう言うのもなんですが、マニュアル撮影には大失敗のリスクが伴いますので、普段一眼レフでマニュアル撮影をしたことがない場合はお勧めできません。せっかくのハンマーヘッドとの遭遇なのに、大失敗の写真では収穫がゼロです。自信がない人は、高感度撮影を使い、速めのシャッタースピードでの撮影を試してみる方が無難です。多少のノイズならPhotoshop等で除去することもできます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神子元で早朝ダイビングが開催された時がありました。これはそのときに現れたハンマーヘッドシャークです。ストロボなしで撮っているので、太陽光の加減によってはどうしても暗めの写真になってしまうことも。ただこの写真は早朝ならでは暗さと青さが特徴の写真になりました。

 

また、ブレを抑えるわけではありませんが、ブレていない写真をゲットするにはストロボを使わない撮影では「連写モード」が有効です。シャッターを押した反動で手ブレすることが多いので、押しっぱなしの連写では2枚目以降に手ブレていない写真が撮れる可能性が高いからです。また、ハンマーは身体全体を降って泳ぐので、顔の角度や尻尾のしなりなど、連写の数枚からベストショットを選択した方が得策です。

連写なら被写体ブレや手ぶれのない写真、ブレの少ない写真、最もハンマーがカッコよく写っている写真を複数枚の中から選べます。やってみてください。

 

また、私の機種には、撮った写真の明暗の差をなくす「DRO」(Dレンジオプティマイザー)という設定があります。逆光などのとき、黒潰れを防ぎ、うっすらでも被写体が見えるよう補正する機能で、逆光のハンマーを見上げて撮ってもクチやエラを描写できることがあります。その反面、逆光でハンマーヘッドのシルエットを撮りたいとき、特に薄い影になる固体はクッキリ感がなくなって、かえって障害になることもあります。群れの奥がシルエットで見えている、その影も薄くなってしまいます。こうしてみると、コンパクトデジカメでも意外と設定やモードによって写真がガラッと変わったり、成功と失敗を分けることが解りますね。

 

最後にオヤジ的所感ですが、押すだけできれいな写真が撮れるデジタルカメラが欲しいとは思うものの、誰が撮ってもきれいな写真が撮れると思うと、それはそれでちょっと寂しい気もします。ハンマーヘッドが目の前に登場してから、小さなボタンでガシガシとマニュアル設定して、失敗覚悟で、やっとこさ撮った自分だけの写真も、それはそれで楽しいものです。

 

失敗だって、たくさんありますけれどね。

勉強、勉強!!

 

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